蔵書家たちの黄昏

反町茂雄の主題による変奏曲

[106] 現代日本の蔵書家4 四万クラスのひとたち

★漂流教室関谷「では今日は四万越えの蔵書家を。」

☆純クレ梅本「まず文化人類学者の山口昌男 (Yamaguchi Masao 1931-2013)が文庫として寄付したのがほぼ4万冊でした。」

★漂流教室関谷「この人趣味が多彩で高山宏に萩尾望都の漫画を土産に持ってきたりしてたってさ」


☆純クレ梅本「作家の夢枕獏(Yumemakura baku 1951-)さんも雑誌を併せて4万冊。海の見える広い書斎に収蔵されています。SF評論家の水鏡子(Suikyoushi 1953-)さんも4万冊です。ただブックオフの100均本が多いそうです」

★漂流教室関谷「”すいきょうし”って読むんだな。今まで”みず きょうこ”だと思ってた・・・」

 


☆梅本「日本史の家永三郎(Ienaga Saburo 1913-2002)さん。4万冊あったらしいんだけど、うち1万2千冊を中国の大学に寄付してます」

★関谷「恩賜賞学者なのに俺的には政治活動のイメージばかりが・・・」


☆梅本「昭和を代表する漢学者の諸橋徹次 (Morohadhi Tetsuji 1883-1882)さん・・・

    およそ2万冊を東京都立図書館に寄付してるんですが、その前にやはり2万冊を・・・」

★関谷「たしか岩崎家の静嘉堂文庫に吸収されてるんだよな。あそこは三菱の財力でいろんな蔵書家の蒐集を買収して巨大化した。」

☆梅本「ええ、でも息子さんの諸橋晋六氏が三菱商事で社長・会長を務めて三菱グループの大幹部になっちゃうんです。それで三菱系の静嘉堂文庫の理事長にも就任するんです。」

★関谷「親の仇を息子がとったのか! 」

☆梅本「あっぱれな息子ですね。ただお父さんは既にここで長年文庫長をやってるんですが・・・
    他に、久保覚 (Kubo Satoru 1937-1998)という著述家が4万あったんじゃないかとか言われてますね。古代史の上田正昭(Ueda Masaaki 1927-2016)さんなんか家の一棟丸ごとが書斎だそうで、やはり4万冊。近代日本文学系では稲垣達郎(Inagaki Tatsuro 1901-1986)さんも41834点ありました。でも、それよか佐藤優 (Sato Yuu 1990-)が不気味なんです」

★関谷「佐藤優がどうしたって?」

☆梅本「『ぼくらの頭脳の鍛え方』という立花隆との対談本で『蔵書は1万5千冊 ひと月の書籍代は 約二十万』とか語ってますけど、これが2009年の出版なんです。それが2012年に出た『読書の技法』という本では4万冊あるって言ってるそうです。わずか三年でこの増え方は凄いですよね。それからさらに9年たってるので今はいくつになってるか分かりません。取り合えず最後に確認できるのが4万なのでここに置いときますが、将来もっと上に置く事になると思います。」

★関谷「こいつは速読の名人で、月平均300冊、多い月は500冊を読むとか言ってたからな・・・」

☆梅本「速読ってよく聞くけど、一体どんな人がやってるんだろうと思ってました。こうなると、愛書家とはもう全然違う世界の人ですよね」

★関谷「佐藤優は外務省の情報分析官だったから、膨大な情報を処理する習慣が・・・。」

☆梅本「せっかく欲しかった本を買って速読なんて味気ないですよねえ。でも忙しいビジネスマンとかはそうでもしないとたくさん本読めないのかな。
    前にこのブログで平岩外四 (Hiraiwa Gaishi 1914-2007)が3万冊集めたって管理人が書いてましたけど、死んだ時には4万2千冊を文庫に寄付してます。あれは平岩さんの著書からの情報で、そのあとまた増えてたんですね。財界を代表する読書家。読んできた膨大な本の中でベストは『孟子』と『韓非子』だそうです」

★関谷「戦後の財界人では、ずっとこの人の蔵書が一番多いって言われてたね・・・」

☆梅本「今はもうちょっと上がいるんです。日本マイクロソフトの成毛眞社長 (Naruke Makoto 1955-)です。1万5千+別荘に3万冊。」

★関谷「人はこれくらい持ってると必ず蔵書をテーマに本を書きたがる。この人もそうだね。」

☆梅本「2000冊もないのにこういうブログを始める管理人にくらべたらまだましですよ」

★関谷「政治家で一番持ってたのは誰だろう」

☆梅本「前尾繁三郎 (Maeo Shigesaburo 1905-1981)がやっぱりこの4万冊クラスなんです。」

★関谷「誰?」

☆梅本「大蔵OBで、宏池会の領袖も務めた大物じゃないですか。この派閥からは前任の池田勇人が総理になってるし、後任も大平・鈴木・宮沢と三代続いて首相ですよ。まかり間違えば自分も総理になりかねなかった人。一部で3万5千冊っていう違う情報もありますけど、亡くなるときには4万くらいになってたらしいです。国会にある本屋から毎月出る本を全部買い入れてたそうです」

★関谷「井上ひさしみたいなことする人がほかにもいたんだね」

☆梅本「あとトンデモライターの志水一夫 (Shimizu Kazuo 1954-2009)が、4万3千あったそうです。こういう人の蔵書内容が案外面白そうですね。
    えーと・・・ 次に紹介する人は滑川道夫 (Namerikawa Michio 1906-1992)さんで、文庫に44060点を寄付されてます。」

☆関谷「誰だそれは? ドラえもんのスネ夫の親戚か?」

★梅本「骨川じゃありません。滑川(なめりかわ)です。児童文学の研究家です。私もこの人は知りませんでした。ほとんどが昔の児童文学のコレクションで、「穎才新誌」「今世少年」「少年世界」「童話時代」などの児童雑誌、巖谷小波の初版本やちりめん本・・・ もう手に入らない貴重なものが多いみたい。本と雑誌はそのうち4万2千冊だそうです」


★関谷「それはそうと、植草甚一 (Uekusa Jinichi 1908-1979)なんだけど、最後どれぐらいになったんだろう?」

☆梅本「4万冊とも言われてるし、5万に届いたとも・・・・・ はっきりしませんね。でもニューヨークで買い集めた洋書とか多いんでしょうね。この人ジャズのレコードもたくさん持っててそっちはタモリが引き取ってます。4000枚でしたっけ」

★関谷「ミステリ評論家、映画評論家、ジャズ評論家って色んな顔があるんだけど、なんなんだろうこの人」

☆梅本「どれでも一番にならなかったところが魅力なんじゃないんですか? ミステリ評論家としては知人の中島河太郎が最高権威でしょう? 映画評論でもやはり友人だった淀川さんや双葉さんの方が批評家としてメインの存在になってる。ジャズ評論家としても油井正一の方が・・・ 油井さんは専業だからレコードは倍の8500枚持ってましたね。」

★関谷「雑学屋でもないし・・・海外文化紹介屋かな? しいて言うと、サブカルの元祖になるのかな? 本やレコード以外にグッズコレクターでもあって、そっちは系譜的に所ジョージあたりにつながる。
    もともと日本のサブカルには二つの源流があって、一つは植草甚一から高平哲郎を経てタモリに流れる『宝島系』、もう一つは『ガロ系』で70年代初めにそこを乗っ取った赤瀬川源平が自分の弟子二人を編集長にして、前衛的な実験漫画誌をサブカル漫画誌に変えて・・・」

☆梅本「その赤瀬川さんも1万冊クラスで言及しましたね。今の文化人ってみんなサブカル系文化人ばかりになっちゃったけど80年代はじめがターニングポイントなのかしら? 」

★関谷「植草さんの本は大和小で漂流してた時よく読んだよ。直接原書にあたってるから、日本での一般的なあちらの文化の紹介と角度が変わってて、例えば映画評論家でもバザンとかじゃなしにディリス・パウエルとか、漫画でも小野耕世のアメコミ紹介なんかとは違ってて風刺系の本流を・・・」


★梅本「では、次回からいよいよ5万越えの人を。蔵書家も5万越えると大変なものですね。江戸時代なら屋代弘賢クラスで一般個人では最大級ですから」

☆関谷「今日ご紹介した蔵書家は15名でした。漂流教室関谷と」

☆梅本「純情クレイジーフルーツ梅本がおおくりしました」

 

 

 

総目次
 
まずお読みください

◇主題  反町茂雄によるテーマ
反町茂雄による主題1 反町茂雄による主題2 反町茂雄による主題3 反町茂雄による主題4

◇主題補正 鏡像フーガ
鏡像フーガ 蒐集のはじめ 大名たち 江戸の蔵書家 蔵書家たちが交流を始める 明治大正期の蔵書家 外人たち 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する 昭和期の蔵書家 公家の蔵書 すべては図書館の中へ 
§川瀬一馬による主題 §国宝古典籍所蔵者変遷リスト §百姓の蔵書
 

◇第一変奏 グロリエ,ド・トゥー,マザラン,コルベール
《欧州大陸の蔵書家たち》
近世欧州の蔵書史のためのトルソhya

◇第二変奏 三代ロクスバラ公、二代スペンサー伯,ヒーバー
《英国の蔵書家たち》

◇第三変奏 ブラウンシュヴァイク, ヴィッテルスバッハ
《ドイツ領邦諸侯の宮廷図書館》

フランス イギリス ドイツ  イタリア
16世紀 16世紀 16世紀 16世紀  16世紀概観
17世紀 17世紀 17世紀 17世紀  17世紀概観
18世紀 18世紀 18世紀 18世紀  18世紀概観
19世紀 19世紀 19世紀 19世紀  19世紀概観
20世紀 20世紀 20世紀 20世紀  20世紀概観
仏概史  英概史  独概史  伊概史

◇第四変奏 瞿紹基、楊以増、丁兄弟、陸心源
《清末の四大蔵書家》
夏・殷・周・春秋・戦国・秦・前漢・新・後漢 三国・晋・五胡十六国・南北朝 隋・唐・五代十国 宋・金・元   中華・中共    

◇第五変奏 モルガン,ハンチントン,フォルジャー
《20世紀アメリカの蔵書家たち》
アメリカ蔵書史のためのトルソ
 
◇第六変奏
《古代の蔵書家たち》
オリエント ギリシア ヘレニズム ローマ

◇第七変奏
《中世の蔵書家たち》
中世初期 カロリングルネサンス 中世盛期 中世末期

◇第八変奏
《イスラムの蔵書家たち》
前史ペルシア バグダッド カイロ コルドバ 十字軍以降
 
◇第九変奏 《現代日本の蔵書家たち》
本棚はいくつありますか プロローグ 一万クラスのひとたち 二万クラスのひとたち 三万クラスのひとたち 四万クラスのひとたち 五万クラスのひとたち 六万クラスのひとたち 七万クラスのひとたち 八万クラスのひとたち 九万クラスのひとたち 十万越えのひとたち 十五万越えのひとたち 二十万越えのひとたち エピローグ TBC

◇第十変奏 《現代欧米の蔵書家たち》
プロローグ 一万クラス 二万クラス 三万・四万・五万クラス 七万クラス 十万・十五万クラス 三十万クラス エピローグ1 

◇第十一変奏
《ロシアの蔵書家たち》
16世紀 17世紀 18世紀①   19世紀① ② ③ 20世紀① ② ③

 

 

Δ幕間狂言 分野別 蔵書家
Δ幕間狂言 蔵書目録(製作中)
 
◇終曲   漫画の蔵書家たち 1 
◇主題回帰 反町茂雄によるテーマ
 

§ アンコール用ピースⅠ 美術コレクターたち [絵画篇 日本]
§ アンコール用ピースⅡ 美術コレクターたち [骨董篇 日本]

§ アンコール用ピースⅢ 美術コレクターたち [絵画篇 欧米]
§ アンコール用ピースⅣ 美術コレクターたち [骨董篇 欧米]
 
§ アンコール用ピースⅤ レコードコレクターたち
§ アンコール用ピースⅥ フィルムコレクターたち
 
Θ カーテンコール 
閲覧者様のご要望を 企画① 企画② 企画③ 企画④


次へ 投稿

前へ 投稿

0 コメント

28 ピンバック

  1. 総目次 2019/5/9更新 – 蔵書家たちの黄昏
  2. [116] Twilight of the Book Collectors – 蔵書家たちの黄昏
  3. 総目次  11/25更新 – 蔵書家たちの黄昏
  4. [113] 現代日本の蔵書家11 十五万越えのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  5. [204] 古代の蔵書家 ローマ – 蔵書家たちの黄昏
  6. [213] イスラムの蔵書家たち 十字軍以降 – 蔵書家たちの黄昏
  7. [9] 鏡像フーガ4 江戸の蔵書家  蔵書家たちが交流をはじめる – 蔵書家たちの黄昏
  8. [10] 鏡像フーガ5 明治大正期の蔵書家 – 蔵書家たちの黄昏
  9. [118] 現代欧米の蔵書家たち 10000クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  10. [208]中世の蔵書家たち 13,14c – 蔵書家たちの黄昏
  11. [7] 鏡像フーガ2 蒐集のはじめ – 蔵書家たちの黄昏
  12. [111] 現代日本の蔵書家9 九万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  13. [114] 現代日本の蔵書家12 二十万越えのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  14. [103] 現代日本の蔵書家たち1 一万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  15. [115] 現代日本の蔵書家∞ エピローグ – 蔵書家たちの黄昏
  16. [12] 鏡像フーガ7 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する – 蔵書家たちの黄昏
  17. [13] 鏡像フーガ8 昭和期の蔵書家 (1970年頃まで) – 蔵書家たちの黄昏
  18. [104] 現代日本の蔵書家たち2 二万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  19. [209] イスラムの蔵書家たち 前史ペルシア – 蔵書家たちの黄昏
  20. [212] イスラムの蔵書家たち コルドバ – 蔵書家たちの黄昏
  21. [206] 中世の蔵書家たち 9, 10c – 蔵書家たちの黄昏
  22. [207]中世の蔵書家たち 11 12c – 蔵書家たちの黄昏
  23. [107] 現代日本の蔵書家5 五万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  24. [112] 現代日本の蔵書家10 十万越えのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  25. [300] 主題回帰 反町茂雄によるテーマ – 蔵書家たちの黄昏
  26. [108] 現代日本の蔵書家6 六万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  27. [203] 古代の蔵書家 ヘレニズム – 蔵書家たちの黄昏
  28. 総目次 4/15更新 – 蔵書家たちの黄昏

返信する

© 2021 蔵書家たちの黄昏

テーマの著者 Anders Norén

Translate »