蔵書家たちの黄昏

反町茂雄の主題による変奏曲

[107] 現代日本の蔵書家5 五万クラスのひとたち

★漂流教室関谷「今日は5万クラスの蔵書家を紹介します」

☆純クレ梅本「ここらへんからほんと少なくなってきます。
       まずゴージャスな書斎の写真が話題になった京極夏彦 (Kyogoku Natsuhiko 1963-)さん。弁当箱みたいな分厚い小説書く人ですよね。京極さんは前に4万クラスで紹介してたんですけど、今年出た本によると5万の大台に乗ってたみたいです。
       次に国文学者の曽根博義 (Sone Hiroyoshi1940-2016)も堂々の蔵書5万冊です。伊藤整なんかの研究やってた人。この人論文はあるんですけど、著作が見つからなくって。だからアマゾンリンクが作れません。
       そしてフランス文学者の鹿島茂 (Kashima Shigeru 1949-)がやっぱり五万クラス。洋書中心で、しかもあちらの稀覯書が多いそうですよ。」

★関谷「この人はこれからも増えていくだろうね。やたら一般向けのエッセイや著書が多いのも稀覯本買うためって話だから。それにしても巴里を題材に一体いくつ本を書いてるんだ?」

☆梅本「やはり著書の多い人ですが、三井物産戦略研究所会長の寺島実郎 (Teradhima Jitsuro 1947-)さんがこの5万冊クラスなんです。三井物産の総合情報室長も歴任されてます」

★関谷「商社の情報畑の人では2万クラスに伊藤忠の三輪さんがいたけど・・・」

☆梅本「寺島さんはもともと世田谷に書庫があったんです。それを九段に移して 寺島文庫 っていうのを作って、今そこを活動拠点にされてるみたいです」

★関谷「世田谷の書庫は親が自宅の庭に建ててくれたって?」

☆梅本「さすが出来る息子は親の対応も違いますね。寺島文庫ミニツアーとかもやってます。
    このクラスから上になると、もう書斎じゃなくて書庫持ってる人が多くなります。ノンフィクション作家の猪瀬直樹さん (Inose Naoki 1946-)もそうで、鉄筋コンクリート四階建てで中央に10mの吹き抜けがある書庫に5万冊詰め込んでるって」

★関谷「これはたしか猪瀬が立花隆のネコビルに対抗して建てたんだそうだ」

☆梅本「でもネコビルの方がおしゃれですねえ」

★関谷「屋上にはプールがあるそうだ」

☆梅本「いよいよ、オッサン臭いですねえ」

★関谷「地階の応接室には暖炉もあるってよ」

☆梅本「こういうところがまた女からみてイラっと来るところなんだけど」

★関谷「それで、肝心の本の量では立花隆には及ばない」

☆梅本「そこがまた猪瀬さんの、猪瀬さんたる所以なんだけど・・・
    とにかく猪瀬さんはこうおっしゃってます。『この書庫は〈ひとりGoogle〉なんだよ。Google検索がない時代に、ひとりで検索ができる世界を作り上げたってことなんだ』(シナプス編集部)」

★関谷「成功した男が自分へのごほうびに城を作ったいい話じゃないか? 何が不満だ」

☆梅本「またこうもおっしゃってます。(4階まで編集者を連れて上がり、吹き抜けから一緒に地階を見下ろして)『この高さから何を思い浮かべる? 飛び込み競技の飛び込み台からプールの水面までが10メートルなんだよ』(シナプス編集部)」

★関谷「なぜ半笑いだ」

☆梅本「いやサッパリ意味が分からないから。本と飛び込み台に一体どういう関係があるのか?」

★関谷「いい男じゃないか? 真面目でエネルギッシュで着眼点が鋭くて古代から近現代のあらゆる事に精通してて」

☆梅本「猪瀬さんの仰ることを伺ってて、多分一般の人が一番感じてるのは、好き放題に本を買って全部経費で落ちる職業はうらやましいなって事でしょうか・・・
    次に紹介する人は、評論家の森本哲郎 (Morimoto Tetsuro 1925-2014)さん。自宅に五万冊あったんだけど、他にも二か所にあるっていうから、実数はもっと多いと思います。キャスターとして活躍してたのは80年代でもう知らない人も多いでしょう。管理人もうろ覚えです」

★関谷「弟がたしか森本毅なんだよな」

☆梅本「ええ、だから兄弟でキャスター。でも今の若い人は久米宏と森本毅の視聴率戦争とか誰も知らなかったりして。
    次は戸川安宣(Togawa Yasunobu 1947-)さん。東京創元社の元社長です。成城大学に5万冊を寄付してます」

★関谷「ミステリの世界ではかなり有名な編集者だよね。」

☆梅本「創元推理文庫の中興の祖っていうか・・・  
    この人ミステリ評論家でもあります。ミステリ関係の蔵書家は今の日本では多いんです。文庫本が安いですから。」


★関谷「さあ今日の最後は誰かな?」

☆梅本「最後は大物です。昭和を代表する大衆文学作家の大佛次郎(Osaragi Jiro 1897-1973)が5万7千冊です」

★関谷「フランスもの、鎌倉文化人、猫・・・ そんなイメージだな俺的には」

☆梅本「鞍馬天狗じゃない?」

★関谷「そんな世代じゃない!」 

☆梅本「このひとも文壇を代表する紳士としてかなり大きな書斎ですよね。
    「天皇の世紀」の頃は朝日新聞が資料収集を援助してました。5万7千冊のうち本は3万6千ほど。雑誌が多くて2万1千もあります。亡くなる直前、入院した時に一誠堂に電話して小梛精以知の指揮の下に蔵書を整理させて記念館に入れたんだって。特にパリコミューンの資料は貴重らしいです、フランス人からしたら、なんで日本がこんなの持ってんだって言いたくなるでしょうが・・・」

★関谷「大衆文学の作家・・・ 歴史・推理・SF・幻想・ユーモア・社会派まで全部含めたうちで文化勲章を受章してるのは吉川英治、大佛次郎、獅子文六、司馬遼太郎の四人だけなんだけど、大佛と司馬は後半生は扱いが完全に文化人だね。 本も五万も六万も持ってるし」

☆梅本「でも大佛さんの場合スタートが鞍馬天狗でしょ? それで晩年が「パリ燃ゆ」だから落差がありすぎて・・・ 最近はその間に書いた「帰郷」とか「宗方姉妹」みたいな中間小説が技術的に評価されてるらしいです」

★関谷「司馬遼太郎以外の三人は今はあまり読まれてないよな。司馬>吉川>大佛>獅子ってとこか?」

☆梅本「吉川英治記念館はもう無くなるそうですよ。大佛次郎記念館は大丈夫かしら?」

★関谷「特に大佛次郎は大物の割に手に取る機会がないというか・・・ おススメはある?」

☆梅本「胡椒息子とか自由学校じゃないかな」

★関谷「それは獅子文六だろっ!」

☆梅本「私『帰郷』は読みましたが作者が自分を投影した主人公のナルシシズムがキツくて挫折しました。四人の中で一番面白いのは獅子文六じゃないかな。『悦ちゃん』とか『胡椒息子』は読み始めたら止まりません」

★関谷「今回紹介した蔵書家の方は8名です。」

☆梅本「ここから上は全国的に名前が通った人ばかりなので、今までみたいに『それ誰?』って人はあまりいなくなりますね」

 

 

 

 

 

総目次
 
まずお読みください

◇主題  反町茂雄によるテーマ
反町茂雄による主題1 反町茂雄による主題2 反町茂雄による主題3 反町茂雄による主題4

◇主題補正 鏡像フーガ
鏡像フーガ 蒐集のはじめ 大名たち 江戸の蔵書家 蔵書家たちが交流を始める 明治大正期の蔵書家 外人たち 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する 昭和期の蔵書家 公家の蔵書 すべては図書館の中へ 
§川瀬一馬による主題 §国宝古典籍所蔵者変遷リスト §百姓の蔵書
 

◇第一変奏 グロリエ,ド・トゥー,マザラン,コルベール
《欧州大陸の蔵書家たち》
近世欧州の蔵書史のためのトルソhya

◇第二変奏 三代ロクスバラ公、二代スペンサー伯,ヒーバー
《英国の蔵書家たち》

◇第三変奏 ブラウンシュヴァイク, ヴィッテルスバッハ
《ドイツ領邦諸侯の宮廷図書館》

フランス イギリス ドイツ  イタリア
16世紀 16世紀 16世紀 16世紀  16世紀概観
17世紀 17世紀 17世紀 17世紀  17世紀概観
18世紀 18世紀 18世紀 18世紀  18世紀概観
19世紀 19世紀 19世紀 19世紀  19世紀概観
20世紀 20世紀 20世紀 20世紀  20世紀概観
仏概史  英概史  独概史  伊概史

◇第四変奏 瞿紹基、楊以増、丁兄弟、陸心源
《清末の四大蔵書家》
夏・殷・周・春秋・戦国・秦・前漢・新・後漢 三国・晋・五胡十六国・南北朝 隋・唐・五代十国 宋・金・元   中華・中共    

◇第五変奏 モルガン,ハンチントン,フォルジャー
《20世紀アメリカの蔵書家たち》
アメリカ蔵書史のためのトルソ
 
◇第六変奏
《古代の蔵書家たち》
オリエント ギリシア ヘレニズム ローマ

◇第七変奏
《中世の蔵書家たち》
中世初期 カロリングルネサンス 中世盛期 中世末期

◇第八変奏
《イスラムの蔵書家たち》
前史ペルシア バグダッド カイロ コルドバ 十字軍以降
 
◇第九変奏 《現代日本の蔵書家たち》
本棚はいくつありますか プロローグ 一万クラスのひとたち 二万クラスのひとたち 三万クラスのひとたち 四万クラスのひとたち 五万クラスのひとたち 六万クラスのひとたち 七万クラスのひとたち 八万クラスのひとたち 九万クラスのひとたち 十万越えのひとたち 十五万越えのひとたち 二十万越えのひとたち エピローグ TBC

◇第十変奏 《現代欧米の蔵書家たち》
プロローグ 一万クラス 二万クラス 三万・四万・五万クラス 七万クラス 十万・十五万クラス 三十万クラス エピローグ1 

◇第十一変奏
《ロシアの蔵書家たち》
16世紀 17世紀 18世紀①   19世紀① ② ③ 20世紀① ② ③

 

 

Δ幕間狂言 分野別 蔵書家
Δ幕間狂言 蔵書目録(製作中)
 
◇終曲   漫画の蔵書家たち 1 
◇主題回帰 反町茂雄によるテーマ
 

§ アンコール用ピースⅠ 美術コレクターたち [絵画篇 日本]
§ アンコール用ピースⅡ 美術コレクターたち [骨董篇 日本]

§ アンコール用ピースⅢ 美術コレクターたち [絵画篇 欧米]
§ アンコール用ピースⅣ 美術コレクターたち [骨董篇 欧米]
 
§ アンコール用ピースⅤ レコードコレクターたち
§ アンコール用ピースⅥ フィルムコレクターたち
 
Θ カーテンコール 
閲覧者様のご要望を 企画① 企画② 企画③ 企画④


次へ 投稿

前へ 投稿

0 コメント

26 ピンバック

  1. 総目次 2019/5/9更新 – 蔵書家たちの黄昏
  2. [116] Twilight of the Book Collectors – 蔵書家たちの黄昏
  3. [13] 鏡像フーガ8 昭和期の蔵書家 (1970年頃まで) – 蔵書家たちの黄昏
  4. [104] 現代日本の蔵書家たち2 二万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  5. [123] 現代欧米の蔵書家たち 300000越えのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  6. [2] 反町茂雄によるテーマ その1 – 蔵書家たちの黄昏
  7. 総目次  12/08更新 – 蔵書家たちの黄昏
  8. [213] イスラムの蔵書家たち 十字軍以降 – 蔵書家たちの黄昏
  9. [7] 鏡像フーガ2 蒐集のはじめ – 蔵書家たちの黄昏
  10. [108] 現代日本の蔵書家6 六万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  11. [120] 現代欧米の蔵書家たち 30000クラス,40000クラス,50000クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  12. [9] 鏡像フーガ4 江戸の蔵書家  蔵書家たちが交流をはじめる – 蔵書家たちの黄昏
  13. [12] 鏡像フーガ7 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する – 蔵書家たちの黄昏
  14. [204] 古代の蔵書家 ローマ – 蔵書家たちの黄昏
  15. [102] 現代日本の蔵書家たち0 プロローグ – 蔵書家たちの黄昏
  16. [105] 現代日本の蔵書家3 三万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  17. [115] 現代日本の蔵書家∞ エピローグ – 蔵書家たちの黄昏
  18. Grolier, De Thou, Mazarin, Colbert – 蔵書家たちの黄昏
  19. [202] 古代の蔵書家 ギリシア – 蔵書家たちの黄昏
  20. [210] イスラムの蔵書家たち バグダッド – 蔵書家たちの黄昏
  21. [212] イスラムの蔵書家たち コルドバ – 蔵書家たちの黄昏
  22. [206] 中世の蔵書家たち 9, 10c – 蔵書家たちの黄昏
  23. [207]中世の蔵書家たち 11 12c – 蔵書家たちの黄昏
  24. [8] 鏡像フーガ3 大名たち – 蔵書家たちの黄昏
  25. [208]中世の蔵書家たち 13,14c – 蔵書家たちの黄昏
  26. 総目次 4/15更新 – 蔵書家たちの黄昏

返信する

© 2021 蔵書家たちの黄昏

テーマの著者 Anders Norén

Translate »