蔵書家たちの黄昏

反町茂雄の主題による変奏曲

[111] 現代日本の蔵書家9 九万クラスのひとたち

★漂流教室関谷「みなさん、こんにちは。漂流教室関谷です。」
☆純クレ梅本 「純クレ梅本です。今日ご紹介するのは蔵書九万クラスの方です。」
★漂流教室関谷「七万クラスに続き、今回もお一人です。」
☆純クレ梅本 「さすがにここまで本持ってる人となると限られてきますね。」

★関谷「さて、昔東大には学生を前にして『日本でもうじき革命が起こる!』って説く教授が実在するという噂があってな・・・」
☆梅本「それが今日の・・・」
★関谷「そう。それが今回紹介する江口朴郎 (Eguchi Bokuro 1911-1989)だ」

☆梅本「今までこのシリーズの蔵書家をみてきた人は分かってると思うけど、9万冊って相当な数ですよ。和書洋書雑誌あわせて90320冊。非図書資料はこのサイトでは入れないことになってますが、これも加えたら10万近いですね。」
★関谷「内訳はどうなってるの?」
☆梅本「えーと 和書10778、洋書726、雑誌78816、非図書資料8330・・・。これ、なんか変ですね」
★関谷「本が1万冊しかないのに、学術誌が8万近くもある。この人はなんでこんなに雑誌持ってんだい?」
☆梅本「この人東京大学の教授なので、基本的な文献に関してはあそこはない物はない筈です。個人で持っておかなければならない特殊な雑誌がはたして8万冊もあるのかしら?」

★関谷「しかしこれだけ情報を集めてて、『もうすぐ日本に革命がおこる』って・・・」
☆梅本「ここの管理人は無教養なので、江口さんの本は中学の時に中公の「世界の歴史14」しか読んでなかったんです。それで今回ブログで取り上げるに際して晩年の本にさっと目を通してみると、考え方は60年代後半とあまり変わってなかったって。歴史が大きく動く時期の直前に書かれた本なんだけど」
★関谷「同時期に、同じ共産主義研究の分野のブレジンスキーが書いた本は、直後に共産国家が破たんする事を予言していたというのにな・・・」(注 「大いなる失敗」)
☆梅本「ブレジンスキーって薄っぺらな感じの人だけど予言だけは妙に当たりますね。佐藤政権末期に日本へ来て「ひよわな花日本」って本書いてそこで将来首相になる政治家を予測してるんです。田中、福田、大平、中曽根とほとんどが的中してる。当たらなかったのは自民党を飛び出た河野洋平ぐらい。」
★関谷「まあブレジンスキーは予言したというよりも、そういう操作をする側の「中の人」だったのかもしれないし・・・」

☆梅本「江口朴郎ってある意味すごく運のいい人ですよね。1989年の三月に亡くなってる。その直後天安門事件が起こり、十一月にはベルリンの壁が崩壊してます。」
★関谷「翌年にはソ連が解体する。社会主義・共産主義の凋落を見ずに死んだ人だな」
☆梅本「死ぬまで夢の中にいた人ですよね。共産社会の実現を夢見てたルイジノーノなんかあの後自殺してるじゃないですか?」
★関谷「お前は共産主義者にはいつも厳しいな」

☆梅本「マルクス主義って経済決定論でしょう? この人はこれだけ資料集めてて、二大超大国とか言われてた冷戦時代もソ連のGNPはアメリカの十分の一以下だったって事を知らなかったんですか?」
★関谷「いや、第三世界でも共産主義への大衆の支持が伸びていて江口はそれを高く評価してて・・・」
☆梅本「この人コミンテルンにも詳しいんでしょう? なら第三世界の左派運動なんか西側の資金がないと」
★関谷「それ言うと陰謀論になっちゃうでしょう! というか、俺が何で江口の弁護してるんだ?」

☆梅本「今回の教訓は、いくら資料を集めたところで、分析する側のメンタルに客観性が欠如していれば全く意味はないという事ですね?」
★関谷「そういう事。 今日ご紹介した方はお一人でした。来週は、いよいよ十万越えの人達が登場することになります。ついにここまで来ました」

 

 

 

総目次
 
まずお読みください

◇主題  反町茂雄によるテーマ
反町茂雄による主題1 反町茂雄による主題2 反町茂雄による主題3 反町茂雄による主題4

◇主題補正 鏡像フーガ
鏡像フーガ 蒐集のはじめ 大名たち 江戸の蔵書家 蔵書家たちが交流を始める 明治大正期の蔵書家 外人たち 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する 昭和期の蔵書家 公家の蔵書 すべては図書館の中へ 
§川瀬一馬による主題 §国宝古典籍所蔵者変遷リスト §百姓の蔵書
 

◇第一変奏 グロリエ,ド・トゥー,マザラン,コルベール
《欧州大陸の蔵書家たち》
近世欧州の蔵書史のためのトルソhya

◇第二変奏 三代ロクスバラ公、二代スペンサー伯,ヒーバー
《英国の蔵書家たち》

◇第三変奏 ブラウンシュヴァイク, ヴィッテルスバッハ
《ドイツ領邦諸侯の宮廷図書館》

フランス イギリス ドイツ  イタリア
16世紀 16世紀 16世紀 16世紀  16世紀概観
17世紀 17世紀 17世紀 17世紀  17世紀概観
18世紀 18世紀 18世紀 18世紀  18世紀概観
19世紀 19世紀 19世紀 19世紀  19世紀概観
20世紀 20世紀 20世紀 20世紀  20世紀概観
仏概史  英概史  独概史  伊概史

◇第四変奏 瞿紹基、楊以増、丁兄弟、陸心源
《清末の四大蔵書家》
夏・殷・周・春秋・戦国・秦・前漢・新・後漢 三国・晋・五胡十六国・南北朝 隋・唐・五代十国 宋・金・元   中華・中共    

◇第五変奏 モルガン,ハンチントン,フォルジャー
《20世紀アメリカの蔵書家たち》
アメリカ蔵書史のためのトルソ
 
◇第六変奏
《古代の蔵書家たち》
オリエント ギリシア ヘレニズム ローマ

◇第七変奏
《中世の蔵書家たち》
中世初期 カロリングルネサンス 中世盛期 中世末期

◇第八変奏
《イスラムの蔵書家たち》
前史ペルシア バグダッド カイロ コルドバ 十字軍以降
 
◇第九変奏 《現代日本の蔵書家たち》
本棚はいくつありますか プロローグ 一万クラスのひとたち 二万クラスのひとたち 三万クラスのひとたち 四万クラスのひとたち 五万クラスのひとたち 六万クラスのひとたち 七万クラスのひとたち 八万クラスのひとたち 九万クラスのひとたち 十万越えのひとたち 十五万越えのひとたち 二十万越えのひとたち エピローグ TBC

◇第十変奏 《現代欧米の蔵書家たち》
プロローグ 一万クラス 二万クラス 三万・四万・五万クラス 七万クラス 十万・十五万クラス 三十万クラス エピローグ1 

◇第十一変奏
《ロシアの蔵書家たち》
16世紀 17世紀 18世紀①   19世紀① ② ③ 20世紀① ② ③

 

 

Δ幕間狂言 分野別 蔵書家
Δ幕間狂言 蔵書目録(製作中)
 
◇終曲   漫画の蔵書家たち 1 
◇主題回帰 反町茂雄によるテーマ
 

§ アンコール用ピースⅠ 美術コレクターたち [絵画篇 日本]
§ アンコール用ピースⅡ 美術コレクターたち [骨董篇 日本]

§ アンコール用ピースⅢ 美術コレクターたち [絵画篇 欧米]
§ アンコール用ピースⅣ 美術コレクターたち [骨董篇 欧米]
 
§ アンコール用ピースⅤ レコードコレクターたち
§ アンコール用ピースⅥ フィルムコレクターたち
 
Θ カーテンコール 
閲覧者様のご要望を 企画① 企画② 企画③ 企画④


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  1. 総目次 2019/5/9更新 – 蔵書家たちの黄昏
  2. [116] Twilight of the Book Collectors – 蔵書家たちの黄昏
  3. [13] 鏡像フーガ8 昭和期の蔵書家 (1970年頃まで) – 蔵書家たちの黄昏
  4. [10] 鏡像フーガ5 明治大正期の蔵書家 – 蔵書家たちの黄昏
  5. [15] 鏡像フーガ10 すべては図書館の中へ – 蔵書家たちの黄昏
  6. [213] イスラムの蔵書家たち 十字軍以降 – 蔵書家たちの黄昏
  7. [101] 現代日本の蔵書家たち 本棚はいくつありますか? – 蔵書家たちの黄昏
  8. [102] 現代日本の蔵書家たち0 プロローグ – 蔵書家たちの黄昏
  9. [110] 現代日本の蔵書家8 八万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  10. [120] 現代欧米の蔵書家たち 30000クラス,40000クラス,50000クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  11. [124]  現代欧米の蔵書家たち エピローグ1 – 蔵書家たちの黄昏
  12. [201] 古代の蔵書家 オリエント – 蔵書家たちの黄昏
  13. [212] イスラムの蔵書家たち コルドバ – 蔵書家たちの黄昏
  14. [9] 鏡像フーガ4 江戸の蔵書家  蔵書家たちが交流をはじめる – 蔵書家たちの黄昏
  15. [207]中世の蔵書家たち 11 12c – 蔵書家たちの黄昏
  16. [208]中世の蔵書家たち 13,14c – 蔵書家たちの黄昏
  17. [104] 現代日本の蔵書家たち2 二万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  18. [8] 鏡像フーガ3 大名たち – 蔵書家たちの黄昏
  19. [12] 鏡像フーガ7 岩崎2家の問題 財閥が蒐集家を蒐集する – 蔵書家たちの黄昏
  20. [115] 現代日本の蔵書家∞ エピローグ – 蔵書家たちの黄昏
  21. [204] 古代の蔵書家 ローマ – 蔵書家たちの黄昏
  22. [209] イスラムの蔵書家たち 前史ペルシア – 蔵書家たちの黄昏
  23. [210] イスラムの蔵書家たち バグダッド – 蔵書家たちの黄昏
  24. [211] イスラムの蔵書家たち カイロ – 蔵書家たちの黄昏
  25. Grolier, De Thou, Mazarin, Colbert – 蔵書家たちの黄昏
  26. [105] 現代日本の蔵書家3 三万クラスのひとたち – 蔵書家たちの黄昏
  27. [202] 古代の蔵書家 ギリシア – 蔵書家たちの黄昏

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テーマの著者 Anders Norén

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