蔵書家たちの黄昏

反町茂雄の主題による変奏曲

[1] はじめに

 だいぶ前に井上ひさしが亡くなって、紅野敏郎、谷沢永一、渡辺昇一と続き、日本には蔵書家らしい人がかなり少なくなりました。

 中山正善や小汀利得といった名だたる稀覯本の収集家が相次いで世を去った1970年前後も、後に残ってるのは雑本のコレクターばかりといわれたもんですが、今現在はさらに絶望的な感じがします。紙の本というメディア自体がオワコンである事情もそれに拍車をかけています。

 で、古今東西の蔵書家ないしはそれにまつわる常識的な知識をわかりやすく総覧したサイトも本も見当たらないので、ちゃんとしたものができるまでアフィリサイトをかねて試作してみましょう。(医療なんかでお金が要りそうなので本代ぐらいまかなえれば・・・)

 神田古書街の天皇といわれた反町茂雄に、日本の蔵書家たちをかんたんに振り返った文章があり、このサイトでもそれを叩き台にして話を進めてゆきます。といっても書誌学者でもなし、古書籍商でもなし、ろくな知識もない者です。反町のように個々の蔵書家の中身まで精細に把握しているわけでもないので、誰々は何万何万言ってるだけになるかもしれません。

 一応 以下の構成で考えていますが、書いてるうちに変わるかもしれません。

 

◇主題    反町茂雄によるテーマ

◇主題補正  鏡像フーガ

◇第一変奏  グロリエ,ド・トゥー,マザラン,コルベール
       《欧州大陸の蔵書家たち》

◇第二変奏  三代ロクスバラ公、二代スペンサー伯,ヒーバー
       《英国の蔵書家たち》

◇第三変奏  陸心源、瞿紹基、楊以増、丁兄弟
       《清末の四大蔵書家》

◇第四変奏  モルガン,ハンチントン,フォルジャー
       《20世紀アメリカの蔵書家たち》

◇第五変奏  現代日本の蔵書家たち

◇以下続く

◇終曲    漫画の蔵書家たち

◇主題回帰  反町茂雄によるテーマ

 

 

 

 

 

 

 

 

編集ノオト 

 

【鏡像フーガの目的】
 最初に主題補正なんて名前をつけちゃったのであれなんですが、反町さんの「主題」を自分が改訂するほど大それたことは考えてはいません(一部の明白な誤りを除いて)。
 むしろ反町さんの「主題」に一般的な通念とは多少異なっている部分があった場合に、鏡のようにそれと対照させてみて全体像を明らかにしようとするのが目的です。


【蔵書家たちの墓碑銘】
 このブログのテーマは、過去に大量の本を読んで厖大な知識を蓄えていたけれども今はもうこの世にはいない人たちへの「アクセス」を提供しようとするものです。
 一人一人の説明は(一部を除き)至って簡単に済ませてます。もし御自分の関心の在り様から興味を持たれた蔵書家がみつかれば検索などでお調べになってください。
 鴎外が古書を漁っていた時に何度も同じ蔵書印を目にして、かつてこのような含蓄ある書を多く所蔵するほどの見識の人物がいた事に感慨を抱き、それが晩年の史伝三部作に向かってゆくきっかけになった話はよく知られていますが、ここもすでに世を去った蔵書家に思いを馳せるよすがとなればと思っています。要はそういう蔵書家たちの「墓碑銘」をweb空間上に刻んでゆく作業です。

 

【機関蔵書や出版・書物の形態について】
 できるだけ、(公開)図書館史にならないように、しかし時代背景としてその時点での書物の集積状況も踏まえて置く必要性から、そこも最低限は記述してゆくというスタンスです。西洋中世なんかになると、修道院蔵書の事を語らないと数百年間書くことがありません。逆に19世紀以降、各国に公共図書館が増加していった後でこんなものまで記述していくとキリがありません。あくまで常識の範囲です。
 また、個人蔵書の傾向の流れを記述していくとなると、出版史や書物の形態史にも触れないわけにはいかない。しかしそれも最低限です。


【資料は除く】
 このブログでは蔵書と定義できるものを対象にしていて、いわゆる「資料」の場合、それがどのようなものかはっきりわからない場合は基本的には保留しています。
 例えば、愛知県の弁護士で大須賀忠夫という人がいて、社会福祉関係の委員会に勤務しその資料が2万点残されましたが、内容がちょっとよく分かりません(その内、図書は600冊とのことです)。
 高山の郷土史家の角竹喜登氏(高山市郷土館名誉館長)にも郷土史関係の4万2千の史料がありますが、これも内容がよくわからないので保留です。
 その反面で、非売品でも製本されたものであればOKということで東大図書館の秋葉本(歌舞伎や浄瑠璃の芝居番付。今でいう映画のパンフレットのようなもの)などは蔵書に勘定しています。


【新たに購入して行った寄付は除く】
 また文庫に寄付されるケースでも、自分の蔵書を寄付する場合は取り上げますが、図書館などへ寄付するために新たに購入する場合は(わずかの期間所有していたにしても)、スルーしています。
 例えば、丸善の司忠社長が豊橋中央図書館へ寄付した司文庫(4万冊)は、ご自身の蔵書を寄付したわけではなく、この図書館へ寄付するために新たに購入したものですね。
 神戸の実業家の小寺謙吉氏も早稲田の図書館に社会科学系の洋書36570冊を寄付してますが、これは関東大震災で多くの大学が蔵書を失った時期に、新たに購入して行われました。(この震災の時には徳川頼倫公も東大図書に巨大な文庫を寄付してますが、こちらはご自身の蔵書です)
 麻生太賀吉による斯道文庫も設立当初から7万と大きいですが、中山正善のように自身の収集の延長上にあるものではなくて財を投じていきなり出現した感があり、また岩瀬文庫とは違って当初から財団法人化もされているので載せないことにしました。
 あと非常に特色ある例では、長谷川与吉(長谷川時計舗社長 明治期の時計作り名人)がドイツの学位論文ばかりを購入して寄付した例があります。人文社会科学31541、自然科学50145、補遺434の計82120冊に及ぶ巨大なもので、時期的にも1700年から1921年の長大な期間に渡っています。十八世紀初頭からというと、ニュートンやライプニッツが現役だった頃からの学術論文なので、生半可な珍籍以上に貴重なものです。しかしこれもやはり蔵書ではないですね。
 (住友文庫や無窮会に関してはすでに本文で触れました)

 かなりの部分が寄贈による個人所有図書館でも一応蔵書家として記載していますが、個人所有であっても名古屋の大惣(江戸時代最大の貸本屋。22600冊もあった)なんかは外してます

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